Excelで商品別の問合せ件数を集計しましたが、どの商品を優先的に改善すれば良いかを上司に伝えたいです。
この場合、どのグラフを使えば良いですか?
そんな場合、「パレート図」を使うと良いですよ!
では、詳細を解説していきますね。
はじめに
この記事はグラフの概要を把握していることが前提です。
グラフの概要については、以下の記事をご参照ください。
集計表の全体感を瞬時に把握したい場合は「グラフ」が有効 集計表にまとめたデータだけだと、数値の特徴や傾向等の全体感がパッと見で把握しにくいです。 仮に、把握できたとしても、読み手は詳細に集計表を読み込み、全体感をつかむた …
パレート図の使いどころ
実務では、業務改善や最適化の対象を特定するためにデータ分析を行うケースがあります。
たとえば、商品や顧客等に対し、より注力した方が良い重要な要素や、問題のある要素を特定したいといったケースです。
こうした場合は、「パレート図」を活用しましょう。
パレート図とは、縦棒グラフと折れ線グラフを組み合わせた複合グラフの一種で、縦棒を構成要素の大きい順に並べ、折れ線で構成要素の累積の構成比を表現したグラフのことです。
各縦棒に間隔は設けず、隙間のない棒グラフとなる。
このパレート図は、業務改善や最適化の対象となる構成要素を視覚的に把握できます。
なお、パレート図は、名前の通り「パレートの法則」(「80:20の法則」)を実践するためのツールです。
この法則は有名ですが、ざっくり言うと、「全体の数値の80%は20%の構成要素からできている」という傾向を表したものです。
80:20はデータによって当然その比率は変わる。
つまり、パレート図を活用することで、全体に対して影響が強い構成要素を特定できるため、その要素に対して改善を行うことで、少ない労力で全体の結果に大きな影響を与えることができます。
使用イメージ
商品別の問合せ件数をパレート図にしたイメージが以下です。
問合せ件数は集合縦棒、累積比率は折れ線。
全体に占める問合せの多い商品群をグラフで可視化できました。
ちなみに、後でグラフの元データの数値データが変わっても自動でグラフへ反映されます。
事前準備のポイント
パレート図を作成する場合、グラフの元データ(データ範囲)の表に対し、以下2種類の事前準備が最低限必要となります。
- 構成要素を数量の降順(大きい順)に並べ替えしておく
- 各構成要素の累積比率(構成比の累計)を算出しておく
なお、累積比率は、先に数量の構成比を四則演算の数式で計算し、その構成比を関数のSUMで累計を計算すればOKです。
SUMでの累計の計算方法については、以下の記事をご参照ください。
はじめに この記事は関数の概要とSUMの使い方を把握していることが前提です。 参考記事 関数の概要とSUMの使い方については以下の記事をご参照ください。 累計とは 「累計」とは、辞書を引くと、次のような意味です。 部分ご …
挿入/設定手順
パレート図を挿入/設定したい場合は、2パターンの手順があります。
【パターン①】複合グラフの応用
パターン①は、複合グラフの応用で挿入/設定する際の手順です。
柔軟にカスタマイズしやすいため、こちらの手順を基本としましょう。
複合グラフの挿入/設定はさらに2パターンあるが、以下は「複合グラフの挿入」コマンド経由の手順(Excel2013以降のバージョンで利用可能)。
- グラフの元データにしたいセル範囲を選択
※今回はA3~B23、D3~D23セル - リボン「挿入」タブをクリック
- 「複合グラフの挿入」をクリック
- 「集合縦棒 – 第2軸の折れ線」をクリック
- 任意の場所へ移動
※今回はF3セル(グラフの左上隅の位置) - 任意のサイズへ変更
※今回はF3~K17セル - 数量を示すデータ系列上で右クリック
※今回は「問合せ件数」 - 「データ系列の書式設定」をクリック
- 「要素の間隔」ボックスを「0」へ変更
- 任意のグラフ要素を追加/削除/設定変更
※今回はグラフタイトル削除、縦軸の目盛の間隔調整(2軸分)、凡例の位置変更
手順①で選択する範囲は、項目名にしたい部分も含めること(含めないと後から項目名の設定が必要)。
手順①で離れたセル範囲を選択したい場合、「Ctrl」キーを押しながら範囲選択すること。
表に総計の行がある場合、手順①のセル範囲に総計を含めないことを推奨(含めると正しいパレート図にならないため)。
手順⑤⑥は図形と同じくドラッグ操作でOK。
複合グラフの詳細については、以下の記事をご参照ください。
はじめに この記事はグラフの概要を把握していることが前提です。 参考記事 グラフの概要については、以下の記事をご参照ください。 複合グラフの使いどころ 通常、グラフは同じ単位の数値データを対象にすることが一般的です。 し …
【パターン②】「パレート図」コマンド経由
パターン②は、「パレート図」コマンド経由の手順です。
この「パレート図」コマンドは、Excel2016以降のバージョンで利用可能です。
パターン①と比べ、細かなカスタマイズはできませんが、より簡単にパレート図を作成できます。
Excel2016以降のバージョンを利用、かつスピード重視でパレート図を作成したい場合は、こちらの手順を活用すると良いでしょう。
- グラフの元データにしたいセル範囲を選択
※今回はA3~B23、D3~D23セル - リボン「挿入」タブをクリック
- 「統計グラフの挿入」をクリック
- 「パレート図」をクリック
- 任意の場所へ移動
※今回はF3セル(グラフの左上隅の位置) - 任意のサイズへ変更
※今回はF3~K17セル - 任意のグラフ要素を追加/削除/設定変更
※今回はグラフタイトル削除
手順①で選択する範囲は、項目名にしたい部分も含めること(含めないと後から項目名の設定が必要)。
【注意】「パレート図」コマンドのカスタマイズできないグラフ要素
「パレート図」コマンドで作成するパレート図でカスタマイズできない要素は、主に以下の2点です。
- 縦軸の目盛の間隔を調整できない(目盛線の本数の調整ができない)
- プロットエリアの表示範囲を調整できない
縦軸の目盛は、最大値/最小値は変更できるものの、目盛線のボックスがないため、目盛線の本数は調整不可です。
プロットエリアも固定範囲(調整不可)となるため、横軸の項目名が隠れてしまう部分がある場合は、グラフ自体のサイズを広げて調整するしかありません。
通常のグラフはドラッグでプロットエリアの表示範囲を調整可能。
上記制約を踏まえて、実務上で活用するかどうかを判断してください。
その他、複合グラフなら追加できるグラフ要素を追加できないものもありますが、こちらは実務上で大きな影響はないと思います。
集合縦棒グラフでは追加可能なデータテーブル、誤差範囲、近似曲線が追加不可。
【応用】「ABC分析」で構成要素をグループ分けする
パレート図をさらに使いやすくするために「ABC分析」も併用することがおすすめです。
ABC分析とは、構成要素をA・B・Cの3種類のグループ(ランク)に分ける手法のことです。
このグループ分けを行う基準は累積比率を使いますが、それぞれのグループの基準の目安は以下の通りです。
- A:累積比率が70%以下の構成要素
- B:累積比率が70%以上90%以下の構成要素
- C:累積比率が90%以上100%以下の構成要素
上記の基準はデータや目的で最適なものにすること。
このABC分析は、グラフの元データの表へ列を追加し、関数のIF等でグループ分けを自動化すると良いです。
必要に応じてグループごとに条件付き書式(セルの強調表示ルール)で色分けすることも有効。
また、図形を活用して、グラフ上にグループ分けの結果を表現すると分かりやすくなります。
このABC分析を行うことで、重点的に改善すべきターゲットのグループの特定や、グループ別の打ち手の整理等に役立ちます。
関数のIFと条件付き書式(セルの強調表示ルール)の詳細については、以下の記事をご参照ください。
はじめに この記事は関数の概要を把握していることが前提です。 参考記事 関数の概要については以下の記事をご参照ください。 条件判定の結果を値で表示したい場合は「IF」が有効 実務では、既存データに対して基準値を条件に評価 …
はじめに この記事は条件付き書式の概要を把握していることが前提です。 参考記事 条件付き書式の概要については、以下の記事をご参照ください。 特に、条件付き書式の共通操作(ルールの適用先変更/表示順変更/複製/停止/削除/ …
サンプルファイルで練習しよう!
可能であれば、以下のサンプルファイルをダウンロードして、実際に操作練習をしてみてください。
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ブックを開いたら、次の手順を実施してください(今までの解説のまとめです)。
- グラフの元データにしたいセル範囲を選択
※今回はA3~B23、D3~D23セル - リボン「挿入」タブをクリック
- 「複合グラフの挿入」をクリック
- 「集合縦棒 – 第2軸の折れ線」をクリック
- 任意の場所へ移動
※今回はF3セル(グラフの左上隅の位置) - 任意のサイズへ変更
※今回はF3~K17セル - 数量を示すデータ系列上で右クリック
※今回は「問合せ件数」 - 「データ系列の書式設定」をクリック
- 「要素の間隔」ボックスを「0」へ変更
- 任意のグラフ要素を追加/削除/設定変更
※今回はグラフタイトル削除、縦軸の目盛の間隔調整(2軸分)、凡例の位置変更
本記事の解説と同じ結果になればOKです!
さいごに
いかがでしたでしょうか?
パレート図は、業務改善や最適化の対象となる構成要素を把握する際に最適です。
ビジネスでは、人員や資金等のリソースに限りがあるため、最小の労力で最大限の成果を上げるために、このグラフを最大限に活用すると良いですね(まさに「選択と集中」)。
なお、グラフ以外にもExcelでのデータ分析の各種テクニックを拙著で解説していますので、こちらも参考にしてみてください。
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