パワークエリの使い方のサムネイル
AさんAさん

Excelでデータの集計をする前に、元データが散らばっていて、かつ不備も多いので、データの収集や整形にかなり時間がとられてしまっています・・・。
できればマクロで自動化したいのですが、VBAを覚えるのは大変そうですし、何か良い方法はありませんかね?

森田森田

それなら、「パワークエリ」という機能がおすすめですよ!
マウス操作中心で一連のデータ収集/整形の手順を記録させ、以降は同じ手順の作業を自動化することが可能です。
では、詳細を解説していきますね。

Excelステップ講座

解説動画:【パワークエリ#1】「パワークエリ(Power Query)」とはどんな機能か?大枠の流れや手順、使い方まとめ

この記事の内容は下記の動画でも解説しています。

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Excelの「パワークエリ」とは

パワークエリとは、データソースに指定したデータの収集/整形の一連の定型作業を自動化できる機能です。
データソースとは、使用するデータの提供元のこと(元データ)。

実務では、データが複数ファイルに散らばっている、あるいは各データに不備や使いにくいデータ構成になっている等が影響し、集計/分析の準備(前処理)に労力がかかることが多いもの。

こんな場合に、パワークエリを活用することで、不備がなく使いやすい集計用の元データを自動作成でき、不毛な前処理を時短でき、データ集計/分析作業全体の生産性アップが期待できます。

一例として、一連の複数手順をパワークエリで自動化したものが以下です。

パワークエリの使用イメージ

  1. 同じブック内の「売上明細」テーブルのデータを取得
  2. 「商品コード」列を大文字へ変換
  3. 「原価」列を削除
  4. 「売上金額」列を追加
    ※「販売単価」列×「数量」列
  5. ~④の結果をテーブルで新規ワークシートへ表示

従来のExcelでは、こうした一連の作業の自動化は、マクロ(VBA)を使うしかありませんでした。

しかし、マクロを作成するには、VBAというOffice専用のプログラミング言語を習得する必要があるため、習得のハードルは高めです。

一方、このパワークエリは、マウス操作中心のローコードで自動化する仕組みを構築できます。

よって、マクロ(VBA)と比べると習得のハードルは低め(ピボットテーブルよりやや難しいレベル)のため、前処理に時間がかかっている方こそ、ぜひ習得することがおすすめです。

なお、パワークエリで自動化する一連の作業は「クエリ」としてExcelブック内に記録されます。

データソースに指定したデータ側に追加や修正があった際は、このクエリを更新(ピボットテーブルと同じイメージ)することで、データソース側の更新情報がパワークエリの処理結果に反映される仕組みです。

参考記事

テーブルの概要については、以下の記事をご参照ください。

パワークエリを利用できるExcelのバージョン

パワークエリはExcel2016以降から標準機能となったため、Excel2016以降あるいはMicrosoft365ユーザーは、Excel上で追加の設定をすることなく利用可能です。

バージョンがExcel2010(Professional Plus)とExcel2013の場合、Microsoft社の公式アドインを事前にインストールすることでパワークエリを利用できるようになります。
Excel2010Professional Plus以外のバージョン、またはExcel2007以前のバージョンは利用不可。

該当の場合は、以下URLからダウンロードおよびインストールをしておきましょう。

参考記事

バージョンがExcel2010(Professional Plus)とExcel2013の方は、以下のダウンロードセンター(Microsoft社)からアドインをインストールしてください。

パワークエリでできること

パワークエリでできることは多岐に渡りますが、大枠で次のような作業を記録できます。

  • データの収集(テーブル/セル範囲、CSVファイル、Excelブック、フォルダー等)
  • データの削除(不要な行列、重複行、空白行等)
  • 表記ゆれの修正(英数字の大文字⇔小文字、置換、トリミング等)
  • データ型の変換(数値、文字列、日付等)
  • データの抽出/分割/連結
  • 計算列の追加(四則演算、日付計算、条件分岐等)
  • データの転記/追加
  • データのレイアウト変更(行列の入れ替え、ピボットの設定/解除等)

実務で頻出のケースの大部分には対応できると思います。

なお、パワークエリの標準機能では一部対応していない処理(英数カナの全角⇔半角の変換ができない等)もあります。

こうした場合、データソース側のデータを処理するか(Excelの場合)、パワークエリ内の別機能で補うといった工夫が必要ですので、ご留意ください。

クエリの新規作成ステップ

パワークエリは、ETLツールの一種だと言えます。
ETL」とは、以下の3ステップの頭文字を略したものです。

クエリの新規作成ステップ

この3ステップを行うことで、クエリの新規作成が可能です。

では、各ステップの詳細を見ていきましょう。

【STEP1】データソースを取得/収集(Extract)

STEP1は、パワークエリのデータソースにするデータを取得/収集します。

パワークエリのデータソースに指定できるデータの種類は非常に多く、202411月現在では以下の通りです。

  • テーブル/セル範囲 ※クエリを記録したブックの中
  • Excelブック ※クエリを記録したブックとは別ファイル
  • テキスト/CSVファイル
  • XMLファイル
  • JSONファイル
  • PDFファイル
  • フォルダー
  • SQL Serverデータベース
  • Microsoft Accessデータベース
  • Analysis Service
  • SQL Server Analysis Serviceデータベース(インポート)
  • Azure Data Lake Storage Gen2
  • Azure Data Explorer
  • レイクハウス
  • ウェアハウス
  • データフロー
  • Dataverse
  • Web
  • ODataフィールド
  • ODBC
  • OLE DB
  • 画像
  • 空のクエリ

しかし、これらすべてを覚える必要はありません。

どこで蓄積/更新されるデータを取得/収集することが頻出なのかを整理すると、多くのビジネスパーソンにとっては以下4種類のコマンドを押さえれば十分だと思います。

パワークエリのデータ取得の主要コマンド

  1. テーブルまたは範囲から
    ※クエリを記録したブック内のテーブル/セル範囲
  2. テキストまたはCSVから
    ※別ファイルのテキスト/CSVファイル
  3. Excelブックから
    ※別ファイルのExcelブックのシート/テーブル
  4. フォルダーから
    ※ローカルフォルダー内の別ファイル

該当の表データの蓄積/更新される場所に応じて、上記コマンドを使い分けましょう。

参考記事

「テーブルまたは範囲から」・「テキストまたはCSVから」・「Excelブックから」・「フォルダーから」の詳細は、以下の記事をご参照ください。





なお、Excelのバージョンによって、データソースに指定できるデータの種類が変わりますので、ご注意ください。

参考記事

Excelのバージョン別のパワークエリのデータデータソースの種類は、Microsoft公式サポートの記事をご参照ください。

【STEP2】取得データを整形/加工

STEP2は、STEP1で取得したデータに対し、整形/加工を行います。
STEP2の処理結果は、データソースのオリジナルのデータへ影響しない(ピボットテーブルと同様)。

このステップでは、「Power Queryエディター」という専用エディター上で作業手順(ステップ)を記録していきます。

基本操作はワークシートに似ていますが、操作対象を選択し、リボン上のコマンドを実行することで、作業手順が記録される仕様です。
ワークシートと異なり、エディター上の操作対象がセルではなく「列」単位が基本となります。

なお、Power Queryエディターを開いている間は、該当ブックでのワークシート上の作業はできませんので、ご注意ください。

参考記事

パワークエリの各種コマンドの詳細は、以下のページをご参照ください。

Power Queryエディターの画面構成

Power Queryエディターの画面構成は以下の通りです。

Power Queryエディターの画面構成

  • リボン
  • タブ
  • コマンド
  • 数式バー
  • ナビゲーションウィンドウ
  • プレビューウィンドウ
  • ヘッダー
  • データ型
  • フィルターボタン
  • 「クエリの設定」ウィンドウ
  • クエリ名
  • 適用したステップ
  • ステップ

補足が必要な構成要素について、順番に解説していきます。

数式バー

ワークシートと同じく、数式バーがあります。

各ステップがどんな処理がされているか、「M」という言語で記録されています。

任意のコマンドを押下する等の操作をすれば、自動的に基本的に記録されているものなので、最初はM言語を触らなくて問題ありません。

パワークエリに慣れてきたら、数式バー上でM言語を直接編集するケースも出てきます。

この数式バーの表示/非表示を変更したい場合は、以下の手順となります。

Power Queryエディターの数式バーの表示/非表示切り替え手順

  1. リボン「表示」タブをクリック
  2. 「数式バー」のチェックをON/OFF
プレビューウィンドウ

プレビューウィンドウは、各ステップの実行結果を確認する領域です。

また、コマンドを実行する対象の列の選択や、このウィンドウ上の右クリックメニュー等からコマンドを実行するケースもあります。

「クエリの設定」ウィンドウ

「クエリの設定」ウィンドウは、クエリ名やクエリ内の作業手順(ステップ)を確認/編集する領域です。

Power Queryエディターの「クエリの設定」ウィンドウの見方

クエリ名は、文字通り「クエリの名前」です。

なお、「クエリ」はパワークエリに限らず、データベースを扱うシステム/ツールに共通する用語です。

ざっくり説明すると、クエリとは「データベースに対しての命令文(検索、更新、削除、抽出など)」を指します。

ここでは、クエリのことを「一連の作業手順の総称」くらいに理解しておけば十分です。

そして、クエリに記録された各作業手順(ステップ)が、「適用したステップ」へ記録されていきます。

この各ステップは、上から下へ1つずつ順番に実行される仕様です。

なお、クエリ名も各ステップも自由にリネームできます。
ステップ名は実行したコマンドに応じて自動で設定される。

ステップについては、該当ステップを選択して「F2」キーを押すか、右クリック→「名前の変更」でリネームが可能です。
後から各ステップの内容の編集や削除することも可能。

標準のステップ名が分かりにくい場合等、必要に応じて変更してください。

【STEP3】整形/加工結果を読み込み(Load)

STEP3は、STEP2の整形/加工結果の読み込み先を設定します。

STEP3まで完了することで、ようやくエディター上の処理結果をワークシート上で表示する、あるいはピボットテーブル等で集計/分析が可能となります。

データの読み込み先の設定手順は、以下の通りです。

パワークエリのデータ読み込み先の設定手順

  1. リボン「ホーム」タブをクリック
  2. 「閉じて読み込む」の下側をクリック
  3. 「閉じて次に読み込む」をクリック
  4. 任意の読み込み先を選択
  5. OK」をクリック

手順②で「閉じて読み込む」の上側をクリックした場合、読み込み先がテーブル(新規ワークシート)となる。
手順④で「テーブル」を選択した際、手順⑤の前にテーブルの表示先を選択すること(新規ワークシートか既存ワークシートか)。
※既存ワークシートの場合、表示先のセル番地も指定(テーブルの左上隅のセル)。

なお、手順④の「データのインポート」ダイアログ上で選択できるデータの読み込み先は4種類あります。

  1. テーブル
  2. ピボットテーブルレポート
  3. ピボットグラフ
  4. 接続の作成のみ

このうち、実務で良く使うのは「テーブル」・「接続の作成のみ」の2種類です。

パワークエリの主要な読み込み先(テーブル・接続の作成のみ)

「テーブル」を選択した場合、パワークエリを実行したExcelブック内のワークシート上(新規or既存)にSTEP2の処理結果をテーブルとして出力します。

「接続の作成のみ」を選択した場合、STEP2の処理結果をExcelブック内のワークシート上に表示せず、内部に保持します。

これは、Excelの行数を超えたデータ、または別作業用にクエリを仮作成する場合等で便利です。

ちなみに、いずれもクエリ作成後はエディターが閉じてワークシートに戻りますが、ワークシート右側に「クエリと接続」ウィンドウが表示されます。

参考記事

「クエリと接続」ウィンドウ上のクエリの基本操作の詳細は、以下の記事をご参照ください。

「クエリと接続」ウィンドウの画面構成

「クエリと接続」ウィンドウの画面構成は以下の通りです。

「クエリと接続」ウィンドウの画面構成

「クエリと接続」ウィンドウの「接続」タブは、パワーピボットを使用する際に使うことが多い。

参考記事

パワーピボットの詳細は、以下の記事をご参照ください。

クエリの更新手順

クエリ作成後、データソース側で追加/更新クエリを更新したい場合、対象のクエリが複数あるか個別なのかで手順が異なります。

すべてのクエリを更新する場合

すべてのクエリを更新する場合は、以下の手順となります。

すべてのクエリの更新手順

  1. リボン「データ」タブをクリック
  2. 「すべて更新」の上側をクリック

手順①②は「Ctrl」+「Alt」+「F5」のショートカットキーで行うことも可能。

個別のクエリを更新する場合

個別のクエリを更新する場合は、「クエリと接続」ウィンドウ上の該当クエリ名の右横にある「最新の情報に更新」をクリックします。

個別のクエリの更新手順

クエリの読み込み先がテーブルやピボットテーブル/グラフの場合、該当のテーブルやピボットテーブル/グラフのセル範囲を選択中に「Alt」+「F5」のショートカットキーで更新することも可能。

クエリを記録したExcelブックを再度開いた場合の操作

クエリ作成後、改めてクエリを記録したExcelブックを開いた場合、以下のような「セキュリティの警告」メッセージが表示される場合があります。

セキュリティの警告
外部データ接続が無効になっています

クエリの更新や編集等を行いたい場合は、以下の手順で信頼済みドキュメントにしましょう。

パワークエリの「コンテンツの有効化」手順

  1. 「コンテンツの有効か」をクリック
  2. 「はい」をクリック

なお、再度開いたExcelブックの場合、デフォルトでは「クエリと接続」ウィンドウが非表示状態となります。

この場合、以下の手順でウィンドウの再表示が可能です。

「クエリと接続」ウィンドウの再表示手順

  1. リボン「データ」タブをクリック
  2. 「クエリと接続」をクリック

さいごに

いかがでしたでしょうか?

パワークエリは、マウス操作中心のローコードで、既存データの収集や整形に関する一連の作業手順を記録でき、自動化できて大変便利な機能です。

ピボットテーブルや関数等での集計/分析の前処理に苦労している方は、ぜひ覚えると生産性アップや時短に役立ちますので、ぜひ覚えて使ってみてください!

なお、パワークエリの各種テクニックは、私の拙著でも体系的に解説していますので、こちらも参考にしてみてください。


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ご参考になれば幸いですm(_ _)m

森田森田

パワークエリ単独では、不備がなく使いやすい集計用の元データを作成することまでが対応範囲です。
この元データを用いて集計/分析するのは関数でも良いのですが、私がおすすめするのは、同じマウス操作中心で集計/分析が可能な「ピボットテーブル」「パワーピボット」との組み合わせです。
データの収集~分析までの一連のプロセスの自動化を、パワークエリ+ピボットテーブル(パワーピボット)で行えると、より楽に時短できるので、ぜひともセットで習得してみてください!